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に日本における障害者福祉立法は一応の完成をみ、これを基本に地方自治体も独自の福祉条例を制定する運びとなている。
海洋性レクリエーション施設におけるバリアフリー化は遅々として進んでいないのが現状である。海洋性レクリエーション施設のうち、プレジャーボートハーバー(マリーナ)は一部の公共マリーナを除いては整備されていない。その代表的事例が東京都夢の島マリーナ、岡山県牛窓マリーナ、広島県観音マリーナである。しかし、バリアフリーが考慮されているのは管理事務所の便所、エレベーター、一部の岸壁であり、ボート係留施設まではアクセスできない。また、ビーチ施設においても同様の傾向を有しており、比較的整備されている代表的事例としては、神奈川県下の藤沢市、横浜市、横須賀市があり、兵庫県では神戸市がある。それらの多くは海岸隣接道路や後浜遊歩道、便所などがバリアフリーを考慮したデザインとなっている。しかし、前浜部分及び海へのアクセスビリティについては考慮されていない。
2−2 北米の現状
アメリカ合衆国及びカナダは、障害者に対する法制度並びに施設整備の面で量も先進的な国である。アメリカ合衆国はADA(America Disabled Act)、カナダもCDAの下にかなりきめ細かい施設整備のマニュアルを作成している。それは単に公共施設の整備に止まらず、各種レクリエーション施設までも法律によってその整備を義務ずけている。その対象としては、船舶ターミナル、マリーナ及び斜路、釣り桟橋、プール、ビーチ(海水浴場)、水族館、ウォーターフロントの各種商業施設などとなっている。
マリーナ及び斜路はアクセスや利便施設のバリアフリーはもちろんのこと、電話も子供や車椅子利用者を対象として高さを低く設定したり、水上オートバイやカヌー、カヤック、カッターなどを利用する際に斜路を利用して海中にアクセスできるように設定されている。また、釣り桟橋については、そのアクセスビリティはもちろんのこと、車椅子のストッパー設置についても義務づけている。ビーチについては海辺(後浜)の遊歩道の設置はもちろんのこと、潮の干満を考慮した前浜の遊歩道の設置を義務づけている。
2−3 欧州の現状
欧州各国では、当然のことながら障害者法は比較的古くから整備されている。しかし、その施設整備の充実度については北欧に勝るものはない。福祉国家として代表的なスエーデンやデンマークは、バイキングとして有名な海洋国家であることから、海洋性レクリエーション施設は十分バリアフリーを考慮した施設展開となっている。
マリーナは、基本的にその桟橋を総てボードウォークで整備し、陸からの車椅子でのアプローチを考慮してアクセス通路の傾斜度及びボートヘの移乗ステップが整備されている。また、海に隣接して障害者のための長期滞在施設も整備されており、海水浴を希望する障害者のための海へのアプローチ・アクセスも整備されている。
3.障害者を対象とする海へのアクセシビリティ調査
3−1 研究の目的及び調査方法
今後の海岸及び港湾、漁港整備において、障害者の利用を考慮した各種施設の計画のあり方が極めて重要な課題と思われる。そこで本研究では臨海部に居住する高齢者及び障害者の海へのアクセシビリティに関する行動意識を把握し、今後の沿岸域整備の方向を探ることを目的とした。併せて、本研究では高齢者と障害者の要望の差異も把握し、その求めるべき整備のあり方を検討することとした。
なお、本調査研究では障害者の定義として社会的弱者である心身障害者及び高齢者、妊婦、幼児、病人、退院後養生を必要とする人々を含める。しかしながら、本調査研究における被験者は高齢者及び身体障害者とする。
本研究の調査対象地を神奈川県とし、神奈川県在住の高齢者及び身体障害者を対象とした。また、調査は対面式アンケート調査と郵送による施設管理者によるアンケート方式とした。調査対象者は、神奈川県に在住の高齢者及び身体障害者としたが、個人のプライバシー保護などによって名簿の入手が困難であったため、神奈川県の協力により県下の老人福祉センター及び身体障害者団体(移動障害者を含み障害部位及び程度は特定せず)を対象として調査を行うこととした。その調査対象施設

 

 

 

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